メディア露出の是非

話を本筋に戻しましょう。オーディションなどの様々な活動が実を結んで、声優としての仕事が軌道に乗り始めると、最近ではアニメ誌・声優誌ではない、いわゆる一般誌やテレビなどのメディア露出が増えます。一日警察署長や観光大使など、官公庁の仕事などもそうですね。

もともとの声優としての業務に加えて、アニメ業界外の仕事が増えるのが、近年の声優の働き方の特徴です。

ただ、これもまた誤解がありそうなのですが、人気のために、いろいろなバラエティ番組などに出演する……それが声優としてのキャリアにとって、必要な業務のように感じてしまう人もいるかもしれませんが、そんなことはないんです。

事実、スタイルキューブの所属声優は、人気がある人であっても、実は積極的にはテレビに出演していません。テレビがどういうものなのかわかっているからというのもありますが、そもそも声優に限らず、テレビ番組に出たから良いというのはわりと幻想です。

失敗すると、本人にとってすごいマイナスになってしまうリスクがあります。テレビというものは「わかって出演しないと意味が無い」と、もともとテレビ側にいた僕は考えます。

ただ声優としての人気が高まると、いまの時代、自ずとそうしたオファーは増えます。そうした状況があるということは、いま声優に関わる人たちは認識しておいてください。そこで足元を掬(すく)われないようにするためにも。

※本稿は、『アイドル声優の何が悪いのか? アイドル声優マネジメント』(星海社)の一部を再編集したものです。

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アイドル声優の何が悪いのか? アイドル声優マネジメント』(著:たかみゆきひさ/星海社)

アイドル声優という観点からこれからの声優業界に必要なことに迫ります。

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