独学で体の仕組みを読み解いて

結婚して2人目の子どもを授かったのを機に仕事を辞め、子育てに専念。その頃、近所の団地の奥さんたちから「体育の先生だったのでしょ? 私たちにも体操を教えて」と頼まれたのが、そもそもの始まりです。

学校で子どもに教えるときは、「はい、こうして腕を回して」と言えば、みんな素直に従ってくれました。でも奥さんたちは、「なんで回すの? 私は肩が痛くてうまく回らないんだけど、どうしても回さなきゃダメ?」って、うるさいうるさい。(笑)

次々ぶつけられる率直な疑問に、ああ私、ちゃんと答えられる勉強をしていないな、と気づいたのです。「肩を回したら肩が痛くなくなるの?」と聞かれて初めて、体の動かし方一つひとつ、そのように動かす理由を理解していなければならないのだ、と悟った。

それで書店に行って「体の仕組みがわかる本はありませんか」と尋ねたのですが、当時はドイツ語で書かれた医師向けの本しかありませんでした。親切な店員さんが探してくれた看護師さんのための本や、学生時代の解剖学の教科書で、一から必死で勉強したのです。

一番役に立ったのは、筋肉と骨と内臓の関係を、子ども向けに詳細なイラストで説明した絵本でした。「指一本一本の筋肉が手首につながり、そこから腕の筋肉になっていく。てのひら側の筋肉は胸側の肋骨に、手の甲側は背中側の肋骨につながって呼吸を司っているんだ」と初めて深く理解できて──その衝撃と喜びは、今も忘れることができません。寝る間も惜しんだ独学で、ようやく体について自分の言葉で、皆さんにお伝えすることができるようになったのです。

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<きくち体操 基本の動き1>
手足のグー・パー

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