自分の体を人任せにしない
近所の奥さんたちに教えた後、他の地域でも指導するようになり、それに並行して地元の横浜市が開く市民向けの体操教室の指導も頼まれました。他の先生は体育の現役教師か元教師でしたから、学校の体育のような授業。でも私が行ったのは、今の「きくち体操」につながるような指導でした。
「腕を動かすと胸や背中の筋肉も動いていることが感じ取れますか? 動かしてその筋肉に力をつけると呼吸がラクになりますよ」「しっかり歩くために太ももの筋肉に力をつけるにはどう動かせばいい?」など、誰にでもわかる言葉を使い、体の仕組みを伝えながら動きを教えるようにしました。
すると他の運動で鍛えるよりも、参加者の体調が明らかによくなっていく。いつしか私の教室だけ参加者があふれるようになりました。ただそのせいか現場では、「あんなもの言葉のまやかしだ」「ちゃんと『普通の体操』をやりなさいよ」と非難され、いじめのような目にも遭いました。
今になって思えば、運動といえば「技術の向上を目指して鍛える」ことが主流で、「自分の体の仕組みを理解して、よくしたいと意識して動かす」など、それまでの体育の世界にはまったくなかった考え方。他の先生たちが理解できないのも、当然だったかもしれません。
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<きくち体操 基本の動き2>
足首回し
手の指が付け根まで入らないのは、足の指が弱っている証拠です。足と手の握手を続けることで脚全体の力がつくとともに、膝や股関節、腰の筋肉とつながる足首を回すことで全身が活性化。冷えの改善にも効果があります。
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