「さすがですね」
 健一が言った。
 日村は聞き返した。
「何がだ?」
「こちらからは何もこたえず、逆に甘糟さんから、中目黒署のマル暴の名前を聞き出したじゃないですか」
「俺たちゃ、情報産業なんだよ。人から話を聞き出してナンボなんだ」
「勉強になります」
 その時、奥の部屋のドアが開いた。
「おう、誠司。ちょっと来てくれ」
「はい」
 部屋を訪ねると、ソファに座るように言われた。オヤジが腰を下ろしてから、日村も浅く腰かけた。
「誰か来てたようだな」
「甘糟さんです」
「そうかい」
「中目黒署から知らせがあったようです。西量寺で何をしてたと訊かれました」
「何とこたえた?」
「ご住職から、ありがたいお話をうかがっていた、と……」
 阿岐本はうなずいた。
「何だか、目黒のほうはぴりぴりしてるみてえだな」
「どうでしょう……」