義理人情に厚いヤクザの親分・阿岐本雄蔵のもとには、一風変わった経営再建の話が次々舞い込んでくる。今度は町の小さなお寺!? 鐘の音がうるさいという近隣住民からのクレームに、ため息を吐く住職。常識が日々移り変わる時代のなか、一体何を廃し、何を残すべきなのか――。


     5

「おう、もう昼過ぎじゃねえか」
 阿岐本が言った。日村はこたえた。
「どこかで食事をなさいますか?」
「そうだな……」
 すると、ハンドルを握る稔が言った。
「大通りに出たところに、鮨屋がありました」
 日村は尋ねた。
「大通り? 山手通りのことか?」
「そうです」
 すると、阿岐本が言った。
「鮨、いいじゃねえか」
 稔が言った。
「では向かいます」
 阿岐本と日村は、山手通りに停めた車から降りた。
「稔」
 阿岐本が言った。「ちょっとここで待ってな」
「はい」