大衆的な鮨屋だ。昼時で混んでいるかと思ったが、そうでもない。ピークを過ぎているのだろう。
 上にぎりを二人前、並を一人前注文した。並を先ににぎってもらい、お土産にして、それを稔に届けた。
 阿岐本と日村は、カウンターではなくテーブル席で鮨をつまんだ。
 阿岐本が言った。
「神社も寺もたいへんだね」
「はい」
「もともとは人様のためにあるもんだ。ありがたがられて当然なのに、まさか迷惑がられるとはなあ……」
「最近、宗教法人は風当たりが強いですからね……」
「妙な宗教団体が問題になったし、税金で優遇されているからなあ……。しかし、神社や寺は人の心の拠り所じゃねえか」
「けっこう、生臭坊主もいるみたいですが……」
「俺は原則を言ってるんだよ」
「すいません」
「どんな批判や非難があろうと、原則を忘れちゃいけねえよ」
「はい。ところで、気になることがあるとおっしゃっていましたが」
「うん……」
「神主の大木さんに、どうして方針を変えたのかと質問されていましたね。気になることというのは、それですか?」
「その話は、事務所に帰ってからにしよう」
「はい」
 鮨を平らげると、二人は車に戻った。稔が「どうも、ごちそうさまでした」と言った。
 阿岐本は車を事務所に向かわせた。