翌日、稔が運転する車は、約束の時間より十分ほど早く西量寺に到着した。本堂の前で田代が阿岐本たちを待っていた。
「町内会の人たちはまだです」
阿岐本が言った。
「いらっしゃるまで、外で待っていましょう」
田代が言う。
「いやいや、先に上がってお待ちください」
「そうはいきません。こちらからお願いして集まってもらったんですから……」
そうこうするうちに、三人の男たちが山門をくぐって近づいてきた。
田代が挨拶する。にこやかだった三人が、阿岐本と日村を見て緊張した面持ちになった。
「住職」
三人組の一人が言った。「この方たちは……?」
「藤堂さん。電話で言ったでしょう。住民の声を聞きたがっている人たちがいるって……」
どうやら彼が藤堂らしい。
「しかし、これは……」
「心配いりません。お二人は私の知り合いなんです。ま、とにかく上がってください」
藤堂たちが並んであぐらをかくと、阿岐本はその前で正座をした。その斜め後ろで日村も正座をする。
両者の間に田代が座った。
町内会の三人は、ものすごく居心地が悪そうだ。彼らは一目見て、阿岐本と日村の素性に気づいたのだ。
阿岐本は低姿勢でにこやかだが、彼らにしてみればそれも不気味なのに違いない。
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