今注目の書籍を評者が紹介。今回取り上げるのは『芸人という病』(西堀亮(マシンガンズ) 著/双葉社)。評者は学者芸人のサンキュータツオさんです。

なんで芸人やってんだ?芸人ってなんなんだ?

2023年、キャリア15年以上の芸人だけが参加する資格のある『THE SECOND 〜漫才トーナメント〜』で準優勝したマシンガンズ。愛嬌しかない、私も大好きなコンビだ(同世代なので思い入れも強い)。

相方の滝沢さんはゴミ清掃芸人としての一面もあってすでに引っ張りだこだったのだけれど、著者の西堀さんはそんな滝沢さんを見て少し焦っていたようだ。芸人を辞めるか、それとも――。そして西堀さんがはじめたのがYouTube。芸人たちの日常。一流の芸人同士の会話は、それだけで漫才だ。

芸人は、ツッコんで笑ってくれる人がいないとボケられない。ツッコミたくても受け止められる人でないとツッコめない。ゆえに芸人ではない人と接するときは静かにおとなしく生活をしている。だから、その両方がいる芸人の世界にいると居心地が良い。自分のことを知っている仲間ならなおさらだ。

本書は西堀さんというキャリア25年の芸人が、腹を割って話してくれる芸人にストレートに質問をぶつけ本質に迫っていく対談集だ。この信頼関係が前提にあったうえで、芸人の偽りのない本音が語られる。

しかも完全なる成功者ではない、一度世に出た人も、世に出きっていない人も本音ばかりである。たまんねえよ! 笑いながら読んで、気づくと涙が出ていたよ!

ピンで芸人を続ける元トップリードの和賀さん。〈「周りが芸人って認めていれば芸人」だと思うんですよ。だってテレビに出ている人で、もうネタやってなくても、世間には芸人として見られてるわけじゃないですか〉。そんなことを言い、日雇いで一日働いて、得たお金をその日のうちに飲んで使い果たす。

なんで芸人やってんだ? 芸人ってなんなんだ? この問いが、西堀さん含め7人の芸人たちに突き付けられる。よくぞここまで話してくれた。芸人て、こんなこと考えて生きてます。