クロパラ
落ちている死体は、どうやらほとんどがクロウミツバメのようだ。クロウミツバメはオーストンウミツバメという近縁種にとてもよく似ているが、後者が真っ黒なのに対して前者は翼の上に白い斑点があるので見分けられる。
幼鳥ではまだこの斑点が見られないが、ここではクロウミツバメしか繁殖が見つかっていないので、間違いないだろう。
この鳥は、世界中で南硫黄島の山頂近くでしか繁殖していない。その面積はわずか0.3平方キロメートル、サハラ砂漠に換算すると、たったの1億分の3サハラしかない。
クロウミツバメの死体がたくさん手に入ることはなかなかない。しかも、巣立ち前の幼鳥の死体はここでしか手に入らない。
よし、ザックに詰められるだけ詰めて帰ろう。
なお、多数の死体に囲まれて大層気分が良かったので、私はここをクロウミツバメパラダイス、通称クロパラと呼ぼうと提案した。
アカパラ(筆者ら調査隊が見つけた「アカテツパラダイス」=通称アカパラ)と対になる良い命名である。だが、残念ながらこの名前は定着しなかった。
そりゃそうだよね、山頂って呼べばいいんだもんね。