すべてを受け入れてくれる「理解ある大人」

話はグルーミングに戻ります。グルーミングの加害者たちは、カウンセラー顔負けの傾聴力を持っています。「友達と嫌なことがあってつらかった」と子どもが訴えれば、「そうか、つらかったね」と返し、否定せず、どこまでも耳を傾けます。

友達との関係に悩む子どもにとって、「自分の話を否定せず聴いてくれる大人がいるんだ!」というポジティブな驚きは、やがて信頼感、つまり加害者たちとのラポールの形成へとつながります。

「友達と嫌なことがあってつらかった」と子どもが訴えれば、「そうか、つらかったね」と返し、否定せず、どこまでも耳を傾けます(写真提供:Photo AC)

その信頼関係を築くまでは当然かなりの時間を要しますが、小児性犯罪者たちの根気強さは、そもそも常人の予想を遥かに超えています。

ここで親子の会話を振り返ってみてください。日常生活全般において、親は子どもに対して「早く寝なさい」「おやつはごはんの前に食べたらダメだよ」「ゲームは30分だけね」など、何かを禁止・制限する言葉を発することが多くなっているのではないでしょうか。

とくに子どもが小さければ、「道路に飛び出しちゃダメ!」「外は暑いから帽子をかぶりなさい!」など、子どもの身の安全を守るためにも、親が禁止や制限の言葉を発する機会が多くなるのも当然です。

さらに年頃になれば、子どもたちも「なんでゲームを好きなだけできないの!?」「いまはまだ寝たくないんだけど〜!」と、親に反抗するようになってきます。