歌手五木ひろしは、俳優、作曲家としても活躍している。その芸域の広さは、昭和の大スターたちとの密な交流も影響しているかもしれない。五木ひろしが語る昭和の大スター秘話。俳優高倉健との個人的な出会いは、赤坂の高級洋品店だったという。前回に続き、五木ひろしが語る高倉健との秘話とは―――。(構成◎吉田明美)

前回はこちら

たった一人で現れた健さん

1976年に僕はラスベガス公演を成功させて、帰国。そのときにファンクラブの会報を「特別号」として発行することにして、ダメ元で高倉健さんにご出演をお願いしました。そしたら「五木さんから頼まれたら断れない。個人としてお引き受けします」と言ってくださったんです。

約束の日、なんと健さんはたった一人で車を運転していらっしゃいました。「今日は仕事ではないので一人です」と…。僕のほうはよってたかって大勢の人間がいたんです(笑)。いやあ、本当に恥ずかしくなりました。

まだ携帯電話がない時代、お互いの連絡はお互いの事務所にしていたのですが、ある時、自宅に電話がかかってきました。僕が不在で母が出て「高倉さんっていう人から電話があった」と…。普通に「高倉と申しますが…」という電話だったんです。「それ高倉健さんだよ」と話したらたまげていました。(笑)