男が惚れる男

洋服も車も、超一流のものが好きだけど、あくまでも地味。そして、一人で運転して僕の家などに来られるときは国産車だったりする。生き方そのものがストイックでした。それが身に付いていたんでしょうね。まさに男が惚れる男でした。

高倉健さんほどの大スターになると、京都の撮影所には専用の楽屋があるんです。普段は誰も使っていない。僕が京都で仕事をするときは、そこを使っていいと言われていました。ありがたい話ですよね。

僕は生意気盛りの20代のときに健さんと出逢って、本当によかったと思っています。どんなに売れていても「実るほど頭を垂れる稲穂かな」で、頭を低くしていないと人がついてこないということを学びました。

健さんも、映画を離れれば一人の人間。僕も歌を歌っていないときは一人の人間です。それを忘れちゃいけないということを身をもって教わったような気がします。

あのような大スターにかわいがっていただけたのは、本当にありがたいです。もっともっといい作品に出ていただきたかった。そしてたくさんのことをもっと教えていただきたかったです。

※次回は「五木ひろしが語る~昭和歌謡史(7)」をお届けします。