デイサービスの卒業日落涙しそうに
じつは、以前にも1度、要支援1の認定を受けたことがあります。あれは77歳の時。胸腹部大動脈瘤感染症で数時間にわたる大手術を受け、一命をとりとめたものの、筋力も心肺機能も低下。リハビリに通わなくてはいけなくなりました。
退院時点ですでに病院側から、私が重篤な病気である旨、近くの地域包括支援センターに連絡が行っていました。おかげで退院後、スムーズに介護認定を受けられたのです。日本の介護保険制度はなかなかよくできていると、改めて実感しました。
介護保険を利用し、週に1度、リハビリ専門のデイサービスに通うことに。デイサービスのいいところは、送迎つきという点です。
まだその頃は、デイサービスに通うのは恥ずかしいと感じる人もいるようでしたので、スタッフの方に「うちに来たら『樋口さ~ん、**デイサービスで~す。お迎えに来ました!』と大声で叫んでくださいね」とお願いしました。
実際、スタッフの方が呼んでくれると、私はすかさず「は~い、よろしくお願いします」と、これまた大声で返事をし、そそくさと出かけます。一種のパフォーマンスですが、意気揚々とデイサービスに行く様子を皆さんに知っていただきたかったのです。
リハビリに特化した施設でしたので半日のみでしたが、体操や器具を使ったリハビリに加えて、ちょっとしたダンスもプログラムに組み込まれていました。私は、体育は苦手でしたが、ダンスはけっこう得意。というのも私どもが若い頃は、女子の体育教育にはダンスが取り入れられていたからです。
半年くらい通ったでしょうか。だいぶ身体の機能を取り戻したので、デイサービスを卒業することに。
最終日、そばにいた人に「仲よくしていただいて、ありがとうございます。おかげさまで、今日で要支援が外れるようでございます」とご挨拶をしたら、初老の女性が「あら、こんないい制度をやめるんですか? あのね、いいことを教えてあげます。更新申請・再申請という制度もあるんですよ。こんないい制度を利用しない手はありませんよ」と言いました。私が、その介護保険を作る側にいた人間だということは、ご存じないようでした。
私はあやうく、落涙しそうになりました。ずいぶん反対もあるなかで、「介護保険を作れ!」と最後まで旗を振り続けて、本当によかった。これは私の生涯における密やかな勲章みたいなものだと、しみじみ思ったのです。