どの世代でも安心して生きていける社会を

さて、大動脈瘤の手術の際の笑える話をひとつ。

手術費、治療費、入院費を合計すると、ゆうに300万円を超える金額に。請求書を見て、「ぎゃっ、300万もとられるの⁉」と、肝を冷やしました。実際は、高額療養費制度のおかげで、高額療養費のうち自己負担限度額を超えた分が払い戻されます。ですから私の場合は、確か15万円ほどの支払いですみました。

ところが私ときたら、15万円強の負担額を見て、付き添ってくれた人の腕をむぎゅっと摑み、小声で「きっと病院の計算違いよ。早く払っちゃって逃げよう!」。もちろん冗談でしたが、本当におっちょこちょいです。

そのうち我に返り、高額療養費制度が適用されていることに気づき、本当に涙が溢れました。私たち日本国民は力を合わせて、高齢者が安心して医療を受けられる制度を作り上げてきたのだ。そういう国にしたのだと、感涙を抑えることができなかったのです。

今、その財源が厳しいと言われています。でも人生100年時代、高齢になっても、どの世代でも安心して生きていける社会を、私たちはこの先も守っていかなくてはならない。残りわずかな人生ですが、生きている限り、そのためにできることを少しでも果たしたい。

それが、91歳の私の偽らざる気持ちです。

【関連記事】
樋口恵子 無謀と言われても84歳で家を建て替えたワケ。エレベーターに電動雨戸。この家で懸命に生き、いよいよになったら施設で介護を受ける選択肢も
樋口恵子 嫁姑問題を避け、自立しようと健気に生きてきたのに思いがけない成行きが。近ごろの親は老いの生き方・住まい方まで難しい【2023年BEST】
樋口恵子「高齢者ひとりでも大丈夫」と思いたいけれど、全然大丈夫じゃないと老いて実感。同居家族がいても「おひとり死」はありうることと心得るべし