(撮影:婦人公論.jp編集部)
NPO法人「高齢社会をよくする女性の会」理事長の樋口恵子さんによる『婦人公論』の新連載「老いの実況中継」。91歳、徒然なるままに「今」を綴ります。第12回は、【人生2度目の要支援認定】です──。(構成=篠藤ゆり イラスト=マツモトヨーコ)

「おぉ、楽だ」レンタル手すりを使ってみた

先日、介護保険の申請をし、「要支援1」の認定を受けました。最近はヨタヨタヘロヘロが加速しているので、家のあちこちに手すりが必要なのです。そこで申請をした次第です。

おかげさまで、ベッドサイドに支柱と手すり、玄関に1つ、門扉から玄関までの小径に2つ手すりを設けることができました。

ベッドサイドに手すりを据えたおかげで、起き上がるのがどれほど楽になったか。「おぉ、楽だ、楽だ」と、思わず声が出てしまいます。しかも、ちょっとした柵の役目もしてくれるので、一緒に寝ている猫に気がねをして妙な寝返りのうち方をしても、(私が)ベッドから落ちる心配がなくなりました。屋外の手すりも見事です。門扉から玄関までの小径は少しカーブしているのですが、1つずつ角度を変えて設置してあるので、手すり伝いに歩けるのです。

2022年秋頃から、政府はこうした介護用具を、レンタルではなく原則買い取りにしようという案を出しています。これには断固反対! 高齢者の実情からかけ離れています。

なぜなら、被介護者の状態は変化していくからです。変化に応じて、使う介護用具も変えていく必要がある。それが利用者の現場ではないでしょうか。

日本よりも福祉政策が進んでいる北欧などでは、介護用具は貸し出し制。北欧には何度か視察に行きましたが、福祉用具の展示場があり、その中からいつでも選べるようになっています。そんな当たり前の福祉サービスを、政府はケチろうとしているのでしょうか。

資源を大切にするという意味でも、買い取りは適切ではありません。SDGsに逆行しています。