「チャンピオンは強いだけでなく、それに相応しい言葉も必要だと僕は思っています」

英語の勉強もしました。学校での英語の授業は全然できなかったけれど、今は優勝インタビューや海外での記者会見は英語で行っています。ただ英語をしゃべればいいというわけではなく、ネイティブな発音ができなければ海外では通用しません。

ジュニアランキング1位になった中学時代、英語の発音が下手なことを欧米の選手から笑われたことがありました。その時、シニアで世界1位になるまでには、絶対にネイティブな発音を身につけようと心に決めたのです。

そのために、日本語を翻訳して英語を学ぶのではなく、英語で英語を学ぶというか、海外で街行く人々の会話に耳をそばだてたり、英語圏の人と積極的に会話したりするようにしました。

彼らの会話はウイットに富んでいるし、ジョークも豊富。それらを理解するには、背景にある文化を理解することも必要です。ホテルに戻ると、覚えた言い回しなどを一人でブツブツ呟いていましたね。

全仏オープンやウィンブルドンで勝った時、優勝インタビューでジョークを交えて喜びを表現したところ、多くの人が笑ってくれたのは嬉しかった。チャンピオンは強いだけでなく、それに相応しい言葉も必要だと僕は思っています。

ただ、負けた時は多くを語りません。23年9月に行われた全米オープンでも優勝を期待されていましたが、1回戦で敗退。その時、敗因はほとんど話しませんでした。言葉にすると、マイナスの要素が脳にインプットされてしまうからです。

その代わり、悔しさを嫌というほど自分に叩き込みました。こんな屈辱を二度と味わいたくない、と。その甲斐あって、それ以降の試合はすべて優勝しています。