「ゆるい職場」は社会や法律の要請
なお、こうした話をすると、「うちの会社は、こういった状況なんですが、『ゆるい職場』なのでしょうか」という質問が企業の経営層や人事の方から来ることがある。しかし、自社が「ゆるい職場」かどうかを気にすることはあまり意味がない。
そもそも、「ゆるい職場」は社会や法律の要請であり、中長期的にはすべての会社がそうならざるを得ない社会情勢にあると言える。
いわばそれは社会全体のトレンドであって、どこかの会社は「ゆるい職場」で別の会社は「きつい職場」で、また別の会社は「ふるい職場」です、といった議論には先はないのだ。
それでも気になる方は、自社の10年前の若手の残業時間や有給休暇取得率と現在のそれを比較いただければいい。ほとんどの企業が改善しているはずだ。
10年前から残業時間が増加していたり、有給休暇取得率が下がっていたりする企業は、そもそももはや法律を守れていない可能性すらあるわけで、若手育成うんぬん以前に自社のコンプライアンス違反を気にした方がいい。
「ゆるい職場」というのは、現代の若手を取り巻く職場環境の変化の全体像なのだ。
※本稿は、『なぜ「若手を育てる」のは今、こんなに難しいのか “ゆるい職場”時代の人材育成の科学』(日経BP 日本経済新聞出版)の一部を再編集したものです。
『なぜ「若手を育てる」のは今、こんなに難しいのか “ゆるい職場”時代の人材育成の科学』(著:古屋星斗/日経BP 日本経済新聞出版)
「職場がゆるくて、成長実感がないから辞めます」
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