剣道部を辞めて合唱部へ
佐藤さんは、福島県喜多方市の出身。歌うことが大好きで、歌っていればご機嫌な子どもだったという。小さいころは童謡を歌い、やがて歌謡曲や映画音楽まで、ノンジャンルで歌っていたと話す佐藤さん。家庭の環境、特にお母さまの影響が大きかったというが、うれしそうに思い出を語る表情は底抜けに明るく、心から歌うことを楽しんでいたことが伝わってくる。
幼稚園の時、大好きな女の子がピアノを習っていることを知り、「あの子と一緒に僕も習いたい」と両親を説き伏せてピアノ教室へ。初恋の女の子とグループレッスンで習いたいという思惑は外れて、個人レッスンのクラスに入ることになったが、それからずっと大学生までピアノも続けることになる。
高校に入って剣道部に所属していたんですが、音楽の授業で歌っていたときに先生から「合唱部に入らない?」と言われたんです。歌うことは好きですからすぐに引き受けたかったのですが、所属していた剣道部をすぐに辞める訳にもいかなくて。僕としては剣道の防具一式を買ってもらったばかりだったし、なかなか親に「剣道をやめたい」と言い出せなかったんです。で、ある日、母に「合唱部に変わりたい」と打ち明けた。怒られるかな?と思ったら母は「あなたの人生なんだからあなたが決めなさい」と…。
この言葉がかえって重くて(笑)。それから半年悩んで、ようやく決心して剣道部の先生に「やめます」と言いに行きました。先生には「音楽なんて才能のあるヤツだけがやれるもんなんだぞ!」と怒られましたが、悩んで出した結論なので、ようやく晴れ晴れと合唱部に所属することができて、楽しい高校生活を満喫しました。
高校3年になって先生から「音大に進む気はないの?」と聞かれたんです。「え?僕が音大? そんな可能性もあるの?」と気付いたとたん、行きたくなった。母からはちょくちょく「音大に行くなんて言わないでね。お金もかかるし…」とけん制されていたんですけどね(笑)。「音大に進学したい」と言ったら母は「そう言い出すんじゃないかと思ってた」と…。お見通しでした。