ご縁を頼りに、生きていく
果たして、高島から戻って1ヵ月もしない頃、ある知らせが届いた。なんと、私の大切な思い出を綴ったエッセイが、とあるコンテストの特選作品として選ばれたのだ。
それは長年願い続けた密かな夢。当時の私には、宝くじが当たるよりも嬉しく、突っ伏して泣きたいほどありがたいことだった。私はすぐに、高島のお社あてにお礼の手紙をしたためた。
あれから16年。68歳を迎えた私は、変わらず結婚歴はなし、子どももなし。まさに天涯孤独の人生を邁進中というところか。しかし、幸い健康に恵まれ、美味しいものを食べることもできている。
暇さえあれば大好きな《推し様》の応援に精を出し、さしたる悩みもないに等しい。人並みの女の幸せこそ得られなかったけれど、老後の日常を楽しんでいる。生かしていただける限り、生きていくだけだ。ご縁を頼りに、私なりにウキウキして。
まもなく私の《推し様》が某地で主演公演を行うので、久しぶりに遠征する予定だ。奇しくも、唐津はその地からほど近い。私は16年ぶりに高島を訪れるつもりでいる。玄界灘の海上には、あの日の帰途、船から望んだ幾筋もの天使の梯子が、また美しく降り立ってくれるだろうか。