腰の重い社員

佐藤 はっきりしているのは、「アリとキリギリス」のフレームでいろいろ解釈しているだけでは、不十分だということですね。それを超えた社会システムを再構築して、ちゃんと機能させていく必要があるわけです。

池上 そのためには、「世の中には、キリギリスもいるんだ」という社会的な合意が必要になるでしょう。

佐藤「社会全体の安全網をアリに担わせるというのは、無理があります」(写真提供:Photo AC)

佐藤 アリもいればキリギリスもいて、それで社会は成り立っている。社会にそういう感覚を呼び覚ますのは、非常に重要なことです。

池上 そもそも、アリの世界だって一様ではないと言われていますよね。集団を「よく働く・普通・働かない」に分けると、よく働くアリが全体の2割、普通のアリが6割、働かないアリが2割になるのだ、という「働きアリの法則」という俗説があります。

働かないアリは「腰の重い社員」のようなもので、普段はよく働くアリに仕事が集中します。しかし、よく働くアリばかりだと、やがて組織の維持が難しくなってしまう。なぜなら、みんなが疲弊して、仕事の効率が一気に低下してしまうからです。

佐藤 そういう環境が不正の温床になったりもします。いざとなったら代わりができる「腰の重い社員」も、組織には必要なのです。