登場人物がよく身ごもる

この作品に限らず、私のマンガは妊娠率が高いという特徴もあります。登場人物が、よく身ごもるのです。

『アリエスの乙女たち』でも、10代の少女が赤ん坊を産むので、読者の親世代から「ふしだらな行為を勧めるな」と猛烈な抗議がきました。

むろん、私の意図は逆で、そうなってしまうかもしれないことを、読者に知っておいてほしいのです。

このマンガはミリオンセラーとなりました。文化祭で、マンガを特集したという学校もありました。

私自身も、描いていて楽しかったですね。他にも連載を抱え、週刊誌掲載の『アリエスの乙女たち』には週2日しか使えません。その2日間にアドレナリンをどっと出して、肉弾戦のような熱いドラマに没入しました。

心中や、失明など重い事件も多いマンガだけれど、実は構造はシンプルで、ヒロインが好きな人と巡り合って、これが本当の愛なのか、迷いながらも強く生きていく話です。

『アリエスの乙女たち』に限りませんが、今でも、仕事などでお会いした中高年の男性に「若い頃読みましたよ」と言っていただくことがあります。

「死のうと思っていたとき、このマンガに出合って思いとどまりました。ありがとう」と、連載から数十年たってからお手紙をくださる方もいました。

連載中は、ヒットするかどうかなど、思い悩むことも多い。けれど、たった一人でも、マンガから生きる力を得る読者がいてくれるなら、どんな苦労も報われるものです。

私の作品はあまり映像化されたものが多くないのですが、『アリエスの乙女たち』はドラマ化されました。主人公は南野陽子さん、お相手が松村雄基さんでした。

テレビで見かけたのですが、唐沢寿明さんも『アリエスの乙女たち』に出演されていたそうです。目立たない一瞬だけの役で、「いつか次は必ず」と話していらっしゃいました。そう言われると、つい探したくなってしまいますね。