“寂しい者同士”の出会い
その人とはじめて会った日のことを、今でも鮮明に覚えている。白と黒のチェックのシャツに、細身のジーパン。はにかんだような笑顔と、不安と緊張が入り混じった空気感。待ち合わせ場所は、函館の産業道路沿いにあるファーストフード店だった。
「精神科の卵」を名乗る学生と出会い系サイトで出会い、相当痛い目に遭ったエピソードは前回のエッセイで綴った通りである。にも関わらず、私は出会い系サイトをやめられずにいた。とはいえ、さすがに「会うこと」には慎重になっていたため、大半の男性はメッセージを数往復した時点で去っていった。当時の出会い系サイトは、今のように結婚を前提とした真剣な交際を求める人よりも、体の関係を求める人のほうが圧倒的に多かったように思う。
しかし、彼は違った。彼は大きな喪失感を抱いていて、その寂しさを埋めたくて出会い系サイトに登録したのだと正直に打ち明けた。それを聞いて、嘘をつけない人なのだと思った。寂しさを埋めたかったのは、私も同じだった。私もその気持ちを、彼に素直に漏らした。忘れられない人がいる。今でも会いたいと願ってしまう。でも、会えない。そういう相手がいる辛さを、2人で長々と語り合った。
彼が住んでいる場所は、同じ道内ではあったものの、物理的に離れていた。簡単に会える距離ではなかったからこそ、メールや電話で数ヵ月もの間やり取りを重ねられたのかもしれない。私たちは慎重に、互いの心を探るように言葉のコミュニケーションを重ねた。