「学歴なんか関係ない」と言ってくれた

私は元夫に、過去のすべてを話すことができなかった。父親から性虐待を受けていたことも、母親から酷い体罰を受けていたことも、どちらも知られたくなかった。だから、「親と折り合いが悪い」という有り体の言葉で濁していた。彼は、両親からこよなく愛されてきた人で、私とは真逆な生育環境にあった。それを知っていたから、尚さら言えなかった。

それでも、精神科に通っていることだけはメールのやり取りの時点で伝えていた。行為の際、私の自傷癖に気付いた彼は、悲しそうな顔で私の腕を撫でただけで、何も追求してこなかった。そんな彼の優しさが好きだった。

「自分が望んだ道ではなかったとしても、10代から働いて自分で生活を立てていることを俺は尊敬している。学歴なんかなくたって、そんなの関係ない」

付き合いたての頃、そう言ってくれたことを彼は覚えているだろうか。離婚して、今年で3年になる。一時は心底憎んだりもしたけれど、今でもこの言葉を覚えているのは、それが本当に嬉しかったからだ。中卒であるというだけで、大抵の人は私を蔑んだ。でも、彼はそんな私を「尊敬している」と言ってくれた。