千秋楽前の不戦勝

14日目は珍しい土俵を見ることになった。

照ノ富士が不戦勝のため、結びの一番は霧島と琴ノ若の対戦となった。裁くのは立行司の木村庄之助ではなく、三役格の木村容堂である。「この一番にて本日の打ち止め」と言うのは、木村容堂だった。緊張したことだろう。

豊昇龍が休場とテレビで知り、結びの一番が不戦勝の場合、どこで不戦勝の照ノ富士が土俵に上がり、行司に四股名を呼ばれるのかと思った。私は相撲の資料箱をひっくり返し、大相撲の解説の本を見たが、載っていなかった。

小結・宇良と大関経験者の前頭4枚目・正代が土俵のすみずみまで使う攻防を繰り広げ、正代が負けて、「4勝10敗なんて悲しいよ、正代」と嘆いていたら、呼出が土俵に上がり「不戦勝」と書いた布を掲げた。花道を照ノ富士が歩いてきて土俵に上がり、立行司の木村庄之助に四股名を呼ばれて不戦勝となった。

「不戦勝ははじめてなので、入り方を確認していました」という照ノ富士の情報が、花道のリポーターであるNHKアナウンサーによって伝えられた。その後、2番の取組があり、土俵下に残った照ノ富士の顔がテレビ画面に映り、物足りないような顔に見えた。

14日目の正面解説は照ノ富士の師匠である伊勢ヶ濱親方(元横綱・旭富士)で、千秋楽前の不戦勝について「(相撲を)取って勝ったほうが良いと思う」と話していた。そして、「だんだん土俵に慣れてきて、自分の相撲が取れてきて良くなってきた」と、照ノ富士について語った。膝よりも腰が悪いそうだ。

テレビ観戦の楽しさのひとつに、解説者とNHKアナウンサーのやりとりがある。滑舌抜群の佐藤洋之アナウンサーが、大関昇進とかいろいろ突っ込んで聞くが、伊勢ヶ濱親方は、「それは審判部が決めることですから」とか正統な返事を繰り返していて、その攻防が面白かった。