覆い

茶樹に覆いをかけて「被覆栽培」するお茶には、玉露やてん茶、かぶせ茶があります。玉露は高級茶、てん茶は抹茶の原料となるお茶で、いずれも鮮やかな緑色と濃厚な滋味、香りが命の上級茶です。

被覆栽培では茶園全体に棚を作って覆いをし、遮光した中で葉を開かせます。覆いに使うのは、稲わらで編んだ「こも」と呼ばれるものや、化学繊維のネット。被覆を始めてから20日後くらいが、お茶の葉を摘むのにちょうどよい時期となります。

そして、最高峰の八女伝統本玉露については、同じ被覆栽培であっても「被覆素材は天然素材のみ」「遮光率は95パーセント以上」「被覆期間は16日以上」などの生産条件が定められており、玉露と区別して付加価値を高めています。

被覆栽培のお茶は露地栽培のものと比べてうま味や甘味が強く、苦味や渋味は軽くなります。また、わずかな光を有効活用するため、クロロフィルが増えて葉の緑色が濃くなります。これらは、被覆栽培による賜物なのです。

こもで被覆した八女伝統本玉露の茶畑(『八女茶――発祥600年』より)