週休2日、1日8時間
結果として、今回の現場は非常に興味深いものでした。「週休2日、1日8時間」と決められているフランスの撮影現場のシステムも新鮮でしたね。深夜や早朝まで撮影が続くのが当たり前の日本のやり方からすれば、「今日は調子が出てきたのでもう少し撮りたいな」と物足りなく感じるときもありました。でも、映画を撮ることを「日常」ととらえるフランス流のスタイルから学ぶことも多かったです。
フランス流のスタイルということでいえば、日常のシーンでも、日本との違いを実感させられる場面がありました。今回の孫娘役の女の子は7歳なのですが、フランスではある程度の年齢になった子どもと「川の字」で寝るのはおかしいと言われて。日本では奥さんの実家で夫婦だけで休むというのは、ちょっと考えにくいですよね。(笑)
また、今回の経験を通じて、日本以外の現場でもやれるという自信もついたので、例えば「じゃあ、次はアメリカで」と、映画監督としての可能性も広がった。いい意味で、これまでの自分自身を壊すことができたのも、今回の作品で得た大きな収穫だったと思います。
とはいえ、実際にカトリーヌ・ドヌーヴと一緒に仕事をするのは大変でしたよ。以前から、僕の映画をフランスで公開してくれていたパブリシスト(宣伝PR担当)の女性がもともとドヌーヴと懇意にしており、「彼女も、これまで観たあなたの映画をとても気に入っている」と教えてくれたので、仕事をオファーする前に一度会って話をしようと、お茶をする約束をとりつけてもらいました。
でも、約束の時間を過ぎてもいっこうに現れない。ようやく、「今、シャワー浴びてるの」と電話がかかってきたのでさらに待っていると、「今日は、ちょっと行けそうにない」と再び連絡が(笑)。そんな感じで約束をすっぽかされたことがありました。
いざ、撮影がスタートしても、撮影には毎回遅刻してくるし、セリフも覚えてこない。楽屋に入ってメイクをしながらセリフを覚えていくタイプでした。まあ、撮影の直前までセリフを書き換える僕にとっては、ある意味では、好都合でもあったわけですが。(笑)
「伝説の大女優が暮らす一軒家」という、今回のロケ場所を探すときも、ドヌーヴは「パリから出たくないわ」って。しかも、彼女が言うところのパリは、自分がいつも愛犬と散歩している中心街だけ。パリ市内のはずれにいい候補地を見つけたので提案してみたら、「そこはパリじゃない! 朝、うちから車で行くと1時間もかかるわ。そこからメイクを始めると、撮影開始の時間がどんどん遅れるけどいいの?」と説得され、結局NGになりました。(笑)