姿勢と呼吸を調えれば、自ずと心も調う

古くから日本に伝わる呼吸法――健康の秘訣ともいえる基礎知識を、なぜ誰も教えてくれなかったのか。そのことに椎名さんは長年疑問を抱いていたが、現代の豊かさが起因するのではないかと考える。

私は学生時代から不調に悩み苦しみ、さまざまな治療法を試してきたにもかかわらず、なぜ長年「呼吸法」に出会えなかったのか。いろいろ考えたのですが、やはり現代の便利な生活が身に染み付いてしまったからなのだろうと思います。

なんでもお金を払って人にやってもらう。物を買ってなんとかする。自分の外側にあるものに頼る世の中になって、内側にある力の使い方を忘れがちになってしまったんですよね。本来、人間にはすごい能力があるのに、その使い方を自分で信じられなくなってしまった。結果、何かに頼る、誰かに頼ることばかりに目がいくようになったのではないでしょうか。

禅の教えに、「三調(サンチョウ)」というものがあります。1つ目が「調身(チョウシン)」。これは、「体を調える」こと。次に「調息(チョウソク)。これは「息を調えること」、最後に「調心(チョウシン)」。これは「心を調える」こと。ZEN呼吸法も、この順番に重きを置いています。

正しい姿勢でなければ、正しい呼吸はできません。「呼吸法」というと呼吸にばかり意識が向きがちですが、まずは「姿勢」からです。姿勢を調えれば呼吸が調い、呼吸が調えば心がおのずと調っていきます。息は、「自分の心」と書きますから。

心は、アクセスがすごく難しいんですよ。でも、体はアクセスしやすいわけです。心は体の中に入っているものなので、体を元気にすることが何よりも近道です。体をないがしろにして心だけを元気にすることはできません。昔の人は、そのことに気づいていた。そこがやっぱり先人の知恵ですよね。

「体をないがしろにして心だけを元気にすることはできないことに昔の人は気づいていた。先人の知恵ですね」