NHK朝の連続テレビ小説『ブギウギ』。その主人公のモデルである昭和の大スター・笠置シヅ子について、「歌が大好きな風呂屋の少女は、やがて<ブギの女王>として一世を風靡していく」と語るのは、娯楽映画研究家でオトナの歌謡曲プロデューサーの佐藤利明さん。佐藤さんいわく「ついに『ブギの女王』となったシヅ子は、映画界でも引っ張りだことになっていった」そうで――。
笠置シヅ子と映画
ここで「東京ブギウギ」をリリースするまでの戦後の笠置シヅ子のレコードと映画について触れておく。
戦後初の笠置のレコードは、1946(昭和21)年11月発売の「センチメンタル・ダイナ」(作詞・野川香文)のセルフ・カヴァーである。この曲は「スウィングの女王」の出発点である。
カップリングは、戦時中に未発売だった南方歌謡「アイレ可愛や」(作詞・藤浦洸)だった。
「センチメンタル・ダイナ」は、1947(昭和22)年12月30日公開の映画『春の饗宴』(東宝・山本嘉次郎)で、黒いイブニング・ドレス姿のシヅ子がスウィンギーに歌唱する。
敗戦後2年間の彼女のパフォーマンスは圧倒的である。
映画はその後、主題歌としてフィーチャーされた「東京ブギウギ」のパワフルなソング・アンド・ダンスへと展開していく。
また「アイレ可愛や」は、戦後初めてシヅ子が出演した映画で、この年9月16日公開の『浮世も天国』(新東宝=吉本プロ・齋藤寅次郎)の挿入歌として劇中で唄った。
横山エンタツ、花菱アチャコ、徳川夢声、古川ロッパに加えて「アノネ、オッサン、ワシャかなわんよ」のフレーズで戦前、戦中の子供たちを夢中にした怪優・高勢實乘の五人男が出演。原作は「轟先生」の人気漫画家・秋吉馨。
残念ながらプリントが現存しないので、観ることは叶わないが、笠置のパフォーマンスはおそらく観客を圧倒したことだろう。