幻の映画

幻の映画、ということでは2017年、神戸映画資料館で戦前のアニメーション映画『HOT CHINA 聖林(ハリウッド)見物』(演出・中山浩、齊藤弥仁)が新たに発見され、上映された。

10分の短編漫画映画だが、笠置シヅ子とリズム・ボーイズをフィーチャーしている。

年末公開『春の饗宴』以降は「ブギの女王」として、各社の映画に引っ張りだことなる(写真提供:Photo AC)

シヅ子と中野忠晴がアニメで登場。

40年9月に発売禁止になった「タリナイ・ソング」「ホット・チャイナ」の頃の製作と思われる。

服部良一は自伝「ぼくの音楽人生」(93年・日本文芸社)で、「ラッパと娘」「センチメンタル・ダイナ」に「つづいて出た『日本娘のハリウッド見物』は紺屋高尾を素材にした浪曲調ジャズとして好評だった」と回想している。

残念ながら「日本娘のハリウッド見物」は、1940(昭和15)年1月SGDのステージ「新春コンサート」で「紺屋高尾ハリウッドへ行く」として披露されたが、レコード化されておらず、聴くことが出来ない。

この短編のタイトルが『HOT CHINA 聖林見物』というのが興味深い。

ことほど左様に、戦前、戦中の音楽や映画について、現存しないものは遅れてきた世代には謎が多い。周辺情報や状況から類推するほかないので隔靴掻痒である。