美空ひばりとの出会い
さて「セコハン娘」が発売されて約1年後、1948(昭和23年)10月、シヅ子は横浜国際劇場「秋の国際まつり」のステージに立った。
楽屋へ前座をつとめる少女歌手とその母親が挨拶に来て、服部とシヅ子に、前座で新曲の「セコハン娘」を歌わせて欲しいと頼んできた。
少女は横浜出身で地元では歌が上手いと評判のまだ10歳の小学生。名前は美空和枝。のちの美空ひばりである。
服部は、シヅ子が「セコハン娘」を歌う予定なので、他の曲にして欲しいと答えた。そこで少女は、菊池章子の「星の流れに」(作詞・清水みのる、作曲・利根一郎)を歌った。
「星の流れに」は、敗戦後、生活のために街角に立っていた街娼のやるせない気持ちを描いて、大ヒットしていた。最後の「こんな女に…」というフレーズは、敗戦後の混乱は誰がもたらしたのか、という怒りに満ちたメッセージでもあった。
これがシヅ子とのちの美空ひばりの初対面のエピソードである。