「“大人”を食ってしまった」

その後、美空ひばりは、1949(昭和24年)1月、日劇「ラヴ・パレード」十二景(演出・白井鐡造)で、灰田勝彦、橘薫、暁テル子たちとともにステージに立った。

この時のことを「日劇レビュー史」(77年・三一書房)で、著者の橋本与志夫は「灰田勝彦を中心に三つの恋を並べた構成だが、笠置ばりで『東京ブギウギ』を歌う“ベビー歌手”美空ひばりが“大人”を食ってしまった」と書いている。

さて、しばらくしてひばりは、喜劇の神様・齋藤寅次郎に抜擢され映画『のど自慢狂時代』(49年3月28日・東横)に出演。「セコハン娘」を大人びた表情で歌って観客を驚かせた。

続く寅次郎の『新東京音頭 びっくり五人男』(6月7日・吉本プロ=新東宝)でひばりは「ジャングル・ブギー」の替え歌パロディを、川田のギター伴奏で歌った。

当時、ひばりはまだレコードデビュー前で、持ち歌がなく、誰よりも好きで敬愛する笠置シヅ子の歌をレパートリーにしていた。

※本稿は、『笠置シヅ子ブギウギ伝説』(興陽館)の一部を再編集したものです。


笠置シヅ子ブギウギ伝説』(著:佐藤利明/興陽館)

2023年NHK朝の連続テレビ小説、『ブギウギ』の主人公のモデル。
昭和の大スター、笠置シヅ子評伝の決定版!半生のストーリー。

「笠置シヅ子とその時代」とはなんだったのか。
歌が大好きな風呂屋の少女は、やがて「ブギの女王」として一世を風靡していく。彼女の半生を、昭和のエンタテインメント史とともにたどる。