部屋を出て、真吉に原磯の件を命じた。
 真吉は事も無げに「わかりました」とこたえた。
 そのとき、日村の電話が振動した。また、西量寺の田代からだ。
「どうしました?」
「ああ、電話しようか迷ったんだがね……」
「いちいち迷わなくてもいいです。何があったんです?」
「抗議デモの人数が一気に増えてね……」
「暴力団追放運動の、ですか?」
「ああ。暇つぶしに集まっているくらいに思っていたんだが、ちょっと考えが甘かったかもしれん」
「何人くらいいるんですか?」
「二十人くらいに増えてるね。今日は土曜日だし、勤めが休みの人なんかが朝から参加しているらしい」
「二十人となれば、ちょっとした集会ですね。ちゃんと届け出をしてるんでしょうか?」
「届け出?」
「無届けデモなら、たしか東京都公安条例違反ですから、警察が取り締まることになります」
「詳しいね」
「警察とはいろいろと関わりがありますから……」
「あ……」
「どうしました?」
「警察が来た。例の二人だ」
 いつも西量寺にやってくる地域課の二人だろう。