人生100年時代、現役世代を駆け抜けた後はどのように過ごせばいいのでしょうか。精神科医の保坂隆先生いわく、人生後期は無理をせず「ほどほど」をキーワードに過ごすことが大切とのこと。『精神科医が教える 人生を楽しむ ほどほど老後術』より、日常生活を元気で楽しく暮らすための知識をご紹介します。

不幸の自慢合戦?

幸せほど見えにくいものはないと思います。「人は自分が幸福であることを知らないから、不幸なのである」とドストエフスキーは書いています。

病院で、「病気自慢」のような会話を耳にすることがあります。入院して同室になった1人が、「自分は5時間もかかる手術を受けた」と話すと、もう1人が「私なんか6時間もかかった」と言う。

さらに他の人が「それどころか、私は12時間ですよ。ほとんど死にかけた」などと、自分のほうがはるかに重く、大変だったと、競うように話すのです。

こうした点では、高齢者にも似たような面があります。「朝早く目が覚めるようになって、今朝は5時起きです」と1人が話すと、別の人が「私なんか、毎朝3時に目が覚めて、もう眠れないんですよ」と言う。

この話だけを聞いていると「どんなに不幸か」の自慢合戦のようですが、よく聞くと、「こんなに大変だけど元気に生きています。幸せですよ」という様子に気づきます。

「もっと大変だ」と話しながら、それなりに楽しそうなのです。