「俺の金だ」と言う夫
今はなんとかなっているが、夫が退職したらどうすればいいのか。しかし何か言おうものなら「俺が稼いだ俺の金だ」と機嫌を損ねる。
なんのことはない、実際に私が自由に動かせるお金などなかったのだ。そんな生活だから、きちんと給与は入るのに、いつも家計は苦しかった。
そしてついに迎えた夫の定年退職。かろうじて貯めていた少しばかりの預貯金はあるものの、決して贅沢できる額ではない。今後の収入は年金だけだ。
2人分の年金から夫に渡す小遣いを引いて、食費、固定費、雑費、交際費、車の維持費、保険料……を払えば何も残らない。
そんな私に向かって、「俺はこれまで給料の全額をお前に渡してきた。俺にはお金がない。だから退職金は俺のものにする」と宣言して、退職金のすべてが夫の手元におさまった。小遣いやらボーナスやらを私に隠れてコツコツ貯めているに違いないのに。