捨て身の思いが私を強くする

子どもは独立している。とうの昔に親も看取って送った。もう自分は一人になっていいのだ。私の年金は7万円ちょっとだが、夫の年金分割も少しはあるだろうし、それをもらって私は家を出よう。古いアパートでも借りて、好きに自由に、幸せに過ごして死のう。

「そんなにわかってもらえないならいい。私別れて出ていくから!」。ついに私は夫に叫んだ。こんな大きな声を出したのは初めてだ。

すると私の剣幕に驚いたのか夫は、「金は明日、俺が振り込んでくるよ」と言い残して自分の部屋へ去っていった。その後、無事に修理費用は夫から振り込まれたようだ。

夫のケチはまだまだ続くと思う。夫といる限り私は一生、「今日もお金がない」と言い続けるだろう。でも、これからの私には覚悟がある。今まで耐えてきた分の強さもある。もういいという捨て身の思いがある。

死ぬまで夫に合わせるのが当たり前で、それが結婚だと思ってきたが、70を超えた今、いつでも一人になれると思うと勇気が湧いてくる。