兄の中村勘九郎さん(左)と、弟の七之助さん(右)(撮影:岡本隆史)
十八世中村勘三郎さんが亡くなってから今年で12年。息子の中村勘九郎さん、七之助さんは、十三回忌追善興行の真っ最中です。ともに舞台に立つ子どもたちの成長を眺めながら、2人の胸に去来する思いとは――(構成=篠藤ゆり 撮影=岡本隆史)

父を愛してくれた先輩方に助けられて

勘九郎 2月から歌舞伎座を皮切りに、父の十三回忌追善の公演が始まりました。この1年はありがたいことに、10月までさまざまな公演が予定されています。父がいなくなってから12年、あっという間でしたね。

七之助 生きていたら、今68歳。いくらなんでも早過ぎた。

勘九郎 亡くなってすぐの頃は、悔しい思いもしたね。役がつかなくなるし、気がつくと周りから人がいなくなっていたり。

七之助 父はプロデューサーとしての感覚に長けていて、若い人にも歌舞伎を観てほしいという思いから、チケット代をなるべく抑えるよう興行主側と交渉していたんです。でも、父が亡くなったらチケット代が上がってしまって……。

今になって思えば興行主側の事情も理解できるのですが、当時は僕たちの心も弱っていたので、つい「父が死んだら変わってしまうんだ」という捉え方をしてしまうところもありました。

勘九郎 なんとか自分たちにできることをやっていこうと、必死だったね。

七之助 ありがたいことに、(片岡)仁左衛門のおじさまや(坂東)玉三郎のおじさまをはじめ、父を愛してくれた諸先輩方が僕らを助けてくださいました。仁左衛門のおじさまが2014年12月に京都・南座で行われた顔見世興行に呼んでくださったり。

勘九郎 そうだったね。昨年5月の平成中村座姫路城公演では、『天守物語』を上演させていただきました。