勘九郎 時々ふっと、父と同じ目をするよね。この間も、台詞を言いながらパッと睨んだ目が、父そっくりで。

七之助 そうそう。びっくりする。長三郎は本名が哲之(のりゆき)といいますが、突然「ノリワールド」が始まることがある(笑)。固まって身動き一つしなくなったり。変わったヤツというか、面白い感覚の持ち主。

勘九郎 普段はファニーな男だけど、稽古着を着て「お願いいたします」と言った瞬間から、別人格になる。スイッチの入り方がすごい。22年に宮藤官九郎さん作・演出の新作『唐茄子屋 不思議国之若旦那』を上演した時も、爆発力とイマジネーションがなかなかのものだった。

七之助 歌舞伎の新作は、一般的な演劇より稽古期間が短いけれど、その中で毎回、なにかしら思いついたことにチャレンジしようとするから。

勘九郎 長三郎はそういう真面目さ、歌舞伎に対する真摯さが父に似ている気がします。かわいそうな時代に生まれたなと思うのは、コロナでしばらく新年のご挨拶回りが禁止になっていたでしょう。おかげで二人ともこの4年ほど、お年玉をまったくもらっていない。(笑)

七之助 確かに。

勘九郎 そういえば昨日、長三郎が漫画『HUNTER×HUNTER』の「軍儀」のグッズを指さして、「2月の公演終わったら、これをもらおう」と、僕に聞こえるように言ってた。

七之助 アハハハ。

<後編につづく

【関連記事】
「息子たちに稽古をつけていると父・中村勘三郎の言葉が甦る。常に歌舞伎界全体の未来を考えていた父の背中を追って」【勘九郎×七之助】
『徹子の部屋』に中村勘九郎さんが登場。2人の息子について語る「長男・勘太郎、次男・長三郎とともに回った巡業。胸に迫るものがあった」
波乃久里子、初舞台からの70年を語り尽くす「歌舞伎の家に生まれ、芸に恋して生きて」

『陽春歌舞伎特別公演 2024』は3月26日~4月1日、東京・千葉・宮城など、全国6ヵ所で上演(勘太郎さん、長三郎さん出演)
『春暁歌舞伎特別公演 2024』は、4月4~24日、福岡、岐阜、大阪など全国15ヵ所で上演
公式サイト