リアルなお芝居を目指して
咲妃 お稽古中、とうこさんは演出補のダニエル・ゴールドスタインさんに、よく質問なさっていますよね。
安蘭 私は昔、別の稽古場で失敗しているから。
咲妃 失敗?
安蘭 舞台経験が多くなると、細かく確認しなくても、ある程度出来たりするじゃない? それで以前、分からないことがあったのに、「きっとこうだろう」と思って聞きに行かなかったことがあったの。そうしたら稽古が進むにつれて、演出の方向性とどんどんズレていって。修正するのがすごく大変だった。
咲妃 とうこさんにも、そんなことが。
安蘭 だからもう、分からないことがあれば、ちゃんと聞こうって決めているの。周りに「なんでそんな初歩的なことを聞いているのか」と思われてもいいやって。過去の失敗は今の自分を生かす、と開き直って。
咲妃 質問に対する返答を一緒に聞けて、私たちはありがたいです!
安蘭 ただ、私がメインで演じているダイアンは、あまり悩まずに演じているかも。テキサスから来た女性で、ざっくばらんな性格で、という。
咲妃 もうダイアンさんにしか見えない。とうこさんの、不必要な力を抜いてお芝居なさっている様子がすごく好きで。
安蘭 酔っぱらうシーンとかリアルでしょう。「お酒好き」というところは、想像力で演じていますので……。
咲妃 ええと……ノーコメントです。(笑)
安蘭 (笑)。それはさておき、ブロードウェイ版を観た時、役者さんたちが『もしかして本人ですか?』というくらいリアルだったのね。衣裳がシャツとパンツだけというのもあって、演じているのに演じていないかのような。だから私もそこまでいきたいなと。
咲妃 劇中では、石川禅さんが演じるイギリス人のニックと惹かれ合うんですよね。
安蘭 実際のダイアンとニックのカップルは、今もラブラブなんですって。お2人は、この作品を100回以上もご覧になっているそう。モデルになった方たちが何度でも観たいと思うのだから、この作品の魅力が分かるよね。みゆちゃんは地元テレビ局の新人レポーター、ジャニスという役。演じていてどう?
咲妃 100分間に5日間の物語を詰め込んでいるので、かなりスピーディーな展開。さらにジャニスのセリフには日付や時刻が多くて、お客様に時間経過を示す役割も担っているので、そのスピードに私自身がまだ追いつけていなくて。もっと余裕をもって届けたいというのが、今の目標です。
安蘭 確かに、みゆちゃんのセリフで場面が変わることが多いから大変だよね。私たちはそのセリフを聞いて、いまどこの場面だとか確認できるからいいけれど。
咲妃 全員がそれぞれに大変ですよね。複数の役を演じるので舞台上にずっといるし、袖に入ってもほんの一瞬で、すぐに出てきたり。
安蘭 そうそう。衣裳は変わらないけど、ジャケットを脱いだり、帽子をかぶったり。『いま私は何の役?』ってなることも。