「無い物買い」の世界
作詞の村雨まさをは、服部のペンネーム。
魚屋の親父が取れ立ての魚をすすめても「オッサン買うのと違います」と、刺身にしたならナンボかおいしかろうと思っただけ、と切り返す。
まさに「無い物買い」の世界。
関西弁ネイティブのシヅ子の歌唱もおかしく、大阪の言葉を知らない地域の子どもたちが「オッサン、オッサン、これなんぼ」を連発。
歌のレッスン中、なかなか歌詞が頭に入らないシヅ子が「ややこし、ややこし」とつい漏らした言葉を「それ、いただくね」と服部は歌詞に取り入れた。
オチの「わて、ホンマによう言わんわ」のフレーズは、関西ことばに触れる機会のなかったエリアの人々に強烈なインパクトをもたらしたが、これは1949年末公開の『エノケン・笠置のお染久松』のなかで、あきれたぼういずの山茶花究、益田喜頓、坊屋三郎が「ああ、知らなんだ」と歌う劇中歌のオチとして「わて、ホンマによう言わんわ」と唄ったのをリフレイン。