『ぺ子ちゃんとデン助』
この『ぺ子ちゃんとデン助』は、前年の『脱線情熱娘』同様、服部&笠置のソングブック映画となっているのが楽しい。
横山隆一が毎日新聞に連載した漫画の映画化で、売れないカストリ雑誌「フラウ」の編集者のペ子と、給仕のデン助(堺駿二)があの手この手で、ヒット企画をものにしようとするコメディ。
上映機会の少ない作品だが、2013年の第六回「したまちコメディ映画祭」で上映された。
コロムビアの歌手・高倉敏が、覆面歌手に転身する警官役で出演。
横山隆一画のタイトルバックに流れる主題歌「ペ子ちゃんセレナーデ」(作詞・東美伊、藤浦洸)は、劇中でもリフレインされる。
銀座のビルの屋上で、ストレス発散でぺ子がシャウトする「ラッパと娘」、同名舞台の主題歌「ラッキー・サンデー」は未レコード化の傑作ソング。
さて「買物ブギー」の4分に及ぶミュージカル・シークエンスは、なんと映画のラストで、もう一度リフレインされる。
同じ曲がリフレインされることがあっても、同じテイクの映像をリプライズで使用することは前代未聞。
それほどインパクトのある映像で、観客には強烈な印象を与えたことだろう。
この「買物ブギー」は、レコードの初回出荷で20万枚がすぐに完売して、コロムビアの記録では初年度だけで45万枚売り上げ、笠置シヅ子にとっては「東京ブギウギ」と並ぶ代表作となった。
1951(昭和26)年10月4日公開の大映京都『女次郎長ワクワク道中』(加戸敏)のラストシークエンスでも歌うが、時代劇なのに、笠置だけでなく、コーラス・ガール演じるおかみさんたちが買物かごをぶらさげて、下駄でリズムを踏んで踊るシーンが圧巻である。
※本稿は、『笠置シヅ子ブギウギ伝説』(興陽館)の一部を再編集したものです。
『笠置シヅ子ブギウギ伝説』(著:佐藤利明/興陽館)
2023年NHK朝の連続テレビ小説、『ブギウギ』の主人公のモデル。
昭和の大スター、笠置シヅ子評伝の決定版!半生のストーリー。
「笠置シヅ子とその時代」とはなんだったのか。
歌が大好きな風呂屋の少女は、やがて「ブギの女王」として一世を風靡していく。彼女の半生を、昭和のエンタテインメント史とともにたどる。