老後の住まい探しは始まったばかり

それから10日ほど。仲介業者の担当女性からメールが来ました。「やりました! A銀行さん、審査通りました!!」。今までまったくお付き合いのなかった某メガバンクです。

「良かった~」。しかも金利は0.3%です。さすがは現役の会社員(モトザワらフリーランスが提示される金利の、半分以下ですね)。祥子さんはほっとしました。「これでやっと、マンションが買える」。都内で、いまの職場への通勤が便利なエリアで、30平米程度でいいので、古くてもキッチンが広い物件。できれば北向きじゃなくて、1階じゃなくて。夢は広がります。

「マンション、見つかるかなあ? 買ったら、遊びに来てね」

もちろん、見つかるでしょう。65歳の定年まであと7年強。祥子さんの老後の住まい探しは始まったばかりです。

男女雇用機会均等法が1986年に施行された後に就職活動をした均等法第1期生は、今年、60歳の定年を迎えます(大学を現役合格だった場合)。つまり均等法世代の女性たちが大量に、現役を引退する時期なのです。史上初めての、女性の大量定年退職です。定年延長で65歳定年になっている企業も多いですが、還暦は、老後の住まいについて考える適齢期であるのは間違いないでしょう。彼女ら、アラ還の働くシングル女性たちは、定年後、どこに住むつもりでしょう。老後の、終の住処について、どう考えているのでしょう。それぞれの事情を聞き取って紹介していきます。

◾️本連載が書籍化され3月8日に発売されました