探せば見つかるかもしれない

祥子さんはすでに2回、内見に行きました。予算が少ないので買える物件はないかもと危惧したけれど、それなりに見つかりました。1つ目は、小さい古いマンションでした。狭いけれど、予算内で買える物件が都内にあった、と分かって、少しほっとしました。探せば見つかるかもしれない、と希望が持てました。

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もう1つは、「なに、いま夜逃げしたの?」って思うほど、残置物が残ったままの部屋でした。地下鉄駅徒歩10分で、北向き1階でしたが、キッチンが広いのが気に入りました。コロナ後、自宅で自炊することが増えて、祥子さんは料理に目覚めました。ワンルームでもいいけれど、コンロが一口しかないのはイヤでした。不動産に詳しい年上の女友だちに、この物件のことを相談したら、目をきらりとさせて、「いいかもしれない」と言われました。「どうせ年を取ったら階段じゃないほうがいいんだから、1階はあり」と言われ、そうか、と納得。いざ申し込もうと思ったら、そこで不動産屋から「残念ですが、売れてしまいました」と言われました。競合は現金買いだったそうです。残念。

「私くらい少ない予算の物件になると、投資家が現金で買えちゃうのよね。現金には負けるから」

そう。不動産売買は弱肉強食。現金買いに勝る者はいません。ローン審査を待つこともない、即金ですぐ契約が成立する現金買いを選ばない売主なんていないでしょう。

祥子さんはとりあえず、ローンの事前審査を出しました。ローンがつかないと買えませんから。そこで、冒頭の事態です。日常的にお付き合いのあるメーンバンクに断られたのです。「手紙が届いて、何かと思ったら、ペラペラの紙切れ一枚で、事前審査の結果、落ちました、って」。祥子さんは憤ります。もう銀行を替えてやる、と。