阿岐本が説明した。
「昔、土曜日は、学校とか役所とかが午前中だけだったんだ。それを半ドンって言ったんだ」
「え? 土曜日、休みじゃなかったんですか?」
「昔の日本人は、よく学び、よく働いたんだ。土曜日だって学校に行ったし、出勤していた。午後が休みになるだけでもありがたかったんだよ」
「へえ……。でも、どうして半ドンって言うんですか? ドンって何です?」
 それは日村も知らなかった。
 阿岐本がこたえる。
「ドンはな、ドンタクのドンだ」
「ドンタク……?」
 稔は何のことかわからない様子だ。日村は尋ねた。
「博多どんたくのドンタクですか?」
「そいつも同じ語源らしい。ドンタクってのは、休みって意味だ。もともとはオランダ語のゾンタークだって話だが……」
「オランダ語……」
 オヤジはやはり物知りだと、日村は感心した。
「追放運動の連中も半ドンだろうとおっしゃいましたね?」
 日村が言うと、阿岐本は苦笑した。