「言葉のアヤってやつだよ。別に半ドンなわけじゃねえだろうけど、土日はみんな、家族サービスだの何だの、用事があるんじゃねえのか?」
「追放されるかどうか、自分らにとっては死活問題じゃないですか。運動するほうも、もっと真剣にやってほしいですね」
「そう言うなよ。人様にはそれぞれ都合ってもんがあるんだよ。さて、誰もいなくなったから、住職に会ってこようか」
阿岐本が車を降りたので、日村もそれに続いた。
山門の周囲に見張りでもいるのではないかと警戒したが、それらしい人影はない。
阿岐本は、堂々と山門をくぐる。日村は周囲を見回しながら、阿岐本についていった。
本堂に近づくと、庫裏のほうから田代住職がやってくるのが見えた。
「親分さん、来てくれたんですか?」
「追放運動の人数が増えたって聞きましたんでね」
「まあ、本堂のほうに、どうぞ」
三人は、本堂に上がり、床に座った。日村は正座をしたが、田代住職から「膝をお楽に」と言われ、阿岐本にも「そうしな」と言われたので、あぐらをかいた。