事務所に着いたのは、午後四時過ぎのことだ。
 阿岐本は奥の部屋に引っ込んだ。日村はいつもの一人掛けのソファに腰を下ろした。ふと気づくと、健一、テツ、真吉の三人が日村を見ている。
「何だ?」
 健一が言った。
「お寺にいらしたんですね?」
「ああ、そうだ」
「寺で何をするんですか?」
 健一たちは、興味津々なのだ。
「わからん」
 日村がこたえると、健一は珍しく食い下がる。
「そんなこと言わないで、教えてくださいよ。自分ら、何かお役に立てること、ないですか?」
「本当にわからないんだ。俺もオヤジが何をしようとしているのか知らない」
「稔や真吉によると、寺が住民と揉めているとか……。揉め事は稼ぎ時だって、自分らの稼業では言われてますよね」
「たしかに揉めている。けど、オヤジはそれをシノギにするつもりはなさそうだ」
「そうなんですか? 神社の件はどうです? 神農さんと手を組めばシノギになるんじゃないですか?」
「そっちも今んところ、なさそうだな」
「でも、オヤっさんのことだから、何かちゃんと考えてますよね?」
「さあな。そうだといいがな」
 本音だった。