熱心に大木の話を聞いていた阿岐本は、突然、原磯に質問した。
「あなたは、駒吉神社の氏子なんですか?」
 虚を衝かれた様子で、原磯は一瞬口ごもってからこたえた。
「今はまだ氏子ではありません。ですから、神主にいろいろと相談していたんです。氏子総代になるには、まず氏子にならなければいけませんからね」
「そりゃそうですね」
 大木が言った。
「氏子総代になってくれるというのは、私にとってはありがたい話なんですよ。氏子といっても、皆さん普段はそんなことを意識はされていません。祭があると、ようやく氏子だったことを思い出すといった有様です。ですから、誰かが率先して活動してくだされば……」
「寄進も増えるというわけですね」
 大木は大真面目な顔でうなずいた。
「うちとしては、それを期待したいですね」
「しかし、氏子総代というのは、何かと面倒なのでしょうな」
 原磯がこたえた。
「面倒だおっくうだと言っていたら、何も始まりませんよ」