絵巻物の従者が自分にそっくり!
現在、出演している『光る君へ』の現場でも学ぶことは多いです。当時の人たちの風俗や習慣を再現するために、「手を振って歩かない」「門をくぐるときや、家の中に入るときは必ず左足から」「姫様、殿様と呼びかけるときは、フラットな抑揚で」など、細かなところまで注意がゆきとどいてるのはさすが大河ドラマだなぁと感心させられます。まひろの家のスタジオセットも、庭にある池や草木がすべて本物で驚くほど素晴らしい。いたるところでプロの仕事に接することができるのが、同じ「何かを表現する人間」として大いに勉強になりますね。
僕は吉高由里子さんにお仕えする従者の役ですが、あるシーンの撮影の前に、当時の人たちの様子が描かれた絵巻をスタッフさんに見せてもらったんですよ。そうしたら、その絵巻に描かれていた従者のたたずまいがめちゃくちゃ僕に似ていたんです(笑)。痩せていて、頼りなさげで、お姫様の用事が済むのを待っている間、道端で居眠りしているような。その姿を見たときに、ああ、自然な感じでやればいいんだなぁって、少し気がラクになりました。
もともと、僕自身は漫画家としても役者としても“異物”だと考えていて。プロの俳優さんたちの中に自分が混ざることで何か面白い化学反応が起きればいいなという感覚で、毎回、お芝居に参加させてもらっています。
とはいえ、人前で演技をするのはやっぱり恥ずかしいですね。今の自分の演技はちょっとカッコつけてたなとか。お客さんから笑いを取ってなんぼの芸人の舞台とはまったく感覚が違います。今回の大河には、芸人仲間のロバート秋山くん(編集部注:天皇の側近、藤原実資役)やはんにゃの金田くん(編集部注:一条朝の四納言のひとり、藤原斉信役)も出演しているでしょう。
2人ともとても重要な役で、オンエアされた画面を見ていても思わず引き込まれるほどの演技力。え? ライバル心? そんなものはまったくありません。もともと僕が勝てる相手じゃないですし、2人ともすごくセリフが多い。あれを覚えるのはさぞかし大変でしょうし、僕の役はセリフが少なくてよかったなって(笑)。ちなみに、秋山くんは地毛でちょんまげを結っているそうで、「長すぎるから、髪を切って」と結髪さんに言われたとか。また、「蹴鞠が好きな貴族」という設定なので、「だから、このくらい日焼けをしていてもいいんです~」と笑いながら教えてくれました。