初めて描いた漫画『大家さんと僕』(2017年)が第22回手塚治虫文化賞短編賞を受賞したお笑い芸人の矢部太郎さん。さらに舞台やドラマで俳優として活躍しており、現在はNHKの大河ドラマ『光る君へ』で、吉高由里子さんが演じる主人公・まひろの従者・乙丸役を熱演中だ。そんな矢部さんの最新コミックエッセイ『プレゼントでできている』が刊行。芸能界を離れた相方への思い、『光る君へ』の裏話などとともに、何かを「もらう」「あげる」ことを通じて、矢部さんが感じている人とのつながりについて語っていただいた。(構成◎内山靖子 撮影◎本社・奥西義和)
自分は誰かからのプレゼントでできている
このところ何回か引っ越しをする機会があって、その度にたくさんのものを整理したことが今回の作品を描くきっかけになりました。ひとくちに「もの」と言っても、簡単に処分できるものとなかなか捨てられないものがあって。で、捨てられないのは人からいただいたものが多いなと気がついたんですね。自分で買ったものは金額もわかるし、もう充分使ったから元は取ったという気持ちになれるんですけど、誰かからもらったものはありがたさと同時に、捨てることへのうしろめたさもあったりして……。
そこから、「プレゼントって何だろう?」って考えるようになったんです。目の前に積まれたものをひとつひとつ見つめ直していくうちに、そのプレゼントをもらったときの気持ちや、贈ってくれた人とのつながりで自分はできているのだと思うようになって。そもそも、人間は親から命をもらって生まれてくるわけですし、言葉を習得することができるのも周りの人たちが自分に話しかけてくれるから。
もっと大きな話で言えば、日々、太陽からエネルギーをもらって生きている。つまり、生まれたときから数々のものもらってきたおかげで、現在の自分ができている。それは決して僕だけの話じゃなくて、この世に生きているすべての人がそうなのだと。そんな思いを伝えたいと思って、今回の作品を描いたんです。