機織りが趣味の母が次々と送ってくる手織りの布も、何に使っていいのか、正直な話、困りましたね。でも、「もう送ってこなくていいから」って伝えたら、ぱったり送ってこなくなっちゃって。もしかして取り返しのつかないことをしちゃったのかもと思っていたら、「最近は、目が悪くなって機織りをしていない」とか。

だったら、これからは僕が母にプレゼントしようと、姉と一緒に、時折、母が着てくれそうな服を送っています。出演した番組のロケでもらった『旅猿』と胸元に大きく書いてあるパーカーも、実家に送ったら母が普段着として着てくれている。自分では恥ずかしくて着られなかったんですけどね。

そう考えると、プレゼントって、お金で割り切れるものとはまったく別の形のやりとりだと思うんです。贈ってくれた相手の思いが込められた、コスパやタイパとは対極にある、その人だけにしか価値がないもの。そういうものを見つめ直していくことで、自分にとって本当に大切なことや、大切な人がわかるんじゃないかと思います。

「プレゼントって、お金で割り切れるものとはまったく別の形のやりとりだと思う」と話す矢部さん(撮影◎本社・奥西義和)

相方には幸せであってほしい

そもそも、僕が芸能界で仕事をするようになったのも、高校の同級生だった入江くんが「コンビを組んで、芸人になろう!」と誘ってくれたから。僕にとっては、ある意味、それもプレゼントだったのかもしれません。

今回のコミックエッセイでも、20年ほど前に、テレビ番組の企画で入江くんと一緒にアフリカロケに行ったときの思い出を描いた箇所がありますが、過酷なロケだったおかげでコンビの仲がめちゃくちゃ良くなったんですよ。現地には娯楽と呼べるものがまったくなかったので、入江くんの服のポケットにたまたま入っていた居酒屋のチラシのメニューを見て、「どれから頼む? やっぱりこれからいっちゃう?」なんて、なんにもないサバンナの真ん中で、2人で2時間以上も熱く語ったりして。(笑)

入江くんは芸能界を離れましたけど、今でも普通に会ってご飯を食べたりしています。2人で一緒にいるときは、相変わらず95%くらい、入江くんが自分の話をしているんですけどね(笑)。どんな仕事をしていても、彼にはやっぱり幸せであってほしいと思います。