「お店のフランス料理」も「家庭のフランス料理」も同じ

非常に心残りだったので、今回の旅行で、もういい大人だから自腹で確かめてみた。

『パリのキッチンで四角いバゲットを焼きながら』(著:中島たい子/幻冬舎文庫)

いとこのソフィーおすすめの、ワイン販売会社が営んでいるというパリの洒落たレストランで、本場のフルコースを初体験。確かに、日本のフレンチレストランと同じように、厳かに料理が運ばれてきて、リッチで、その形態に大きな違いはなかった。

でも、子供の自分に、今私はこう言って訂正したい。「お店のフランス料理」も「家庭のフランス料理」も同じです。大きな違いはありません、と。

なぜそう思ったかというと、ソフィーが子供たち(五歳と八歳の男の子)に食事をさせているのを見ていたら、それがちゃんと「フルコース」になっていたから。

ある日のメニューでは、彼女は子供たちに可愛らしい二十日大根みたいなものを渡して、食べさせるところから食事をスタートさせていた。これはフルコースで言うところのオードブルだ。

二人がそれを食べ終えると、野菜スープを注いだ小さなカップが置かれて、子供たちはゆっくりそれを楽しむ。飲み終わったら次はメイン、魚の切り身をのせた玄米のリゾットのようなもの。そしてデザートに甘いヨーグルトみたいなものを食べて、終わり。

テーブルに着いた男の子たちが、まずは葉付きのちっちゃい大根を握って、生のまま楽しそうにかじるのを見て、「オードブル」というものはフレッシュなものを見て、食べて、食欲を盛り上げていくものなんだなぁ、と今さら知った。